高田崇史著『鬼神伝 鬼の巻』

中学生の天童純は密教層源雲の呪(じゅ)により平安京へタイムスリップする。そこでは歴史で習った史実とは異なり、攻めて来る鬼軍団と人間たちとの戦いが繰り広げられていた。純はオロチを遣える能力を見込まれて参戦するが、すぐに現実はそう単純な勧善懲悪ではないのだと知り、何をなすべきなのか迷いはじめる。果たして人とはなんなのか? 鬼とは?
新潮社ミステリランド*1の一冊。
ミステリランドは豪華執筆陣の顔ぶれをみているだけでワクワクもの。裏を返せば癖のあるツワモノどもの揃い踏み。この本もただの鬼退治話で終わるわけがない。学校で日本史として恭しく教え込まれているものは勝者の編んだまやかしにすぎないという啓蒙小説なのである。本書で啓蒙されたら平安時代の「人と鬼」の実態をあばいた『QED式の密室』がおすすめです。
タイトルに「鬼の巻」とあるので、どこかで続編を書くつもりがあるのかな。期待していてよいのでしょうか?

*1:新潮社が「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と銘打って刊行中のジュブナイルミステリ集。作家は既成の第一線のミステリ作家がめじろおし。本書は第三回配本の1冊。同時刊行は太田忠志『黄金蝶ひとり』、竹本健治『闇のなかの赤い馬』。