高野和明著『幽霊人命救助隊』

自殺した四つの男女の魂。彼らは成仏するために神様から与えられた課題「7週間のうちに100人の自殺しそうな人を思いとどまらせる」をまっとうするため下界へとおりる、幽霊ユーモア長編小説。
孤独、虚無、借金、いじめ、リストラ、etc。人が絶望し、自殺へとかられていく動機はさまざまだ。幽霊たちは、そうした自殺志願者ひとりひとりの心の声を聞き取り、試行錯誤を重ねながら、なんとか自殺をふみとどまらせていく。彼らにできるのは「耳を傾け」「応援」することだけ。与えられる影響は、気の持ち様のわずかな軌道修正のみ。自殺をする人間の心理、彼らを救うにはなにが必要なのか。自殺を思いとどまらせるのは実は簡単なことなのかもしれない。彼らの心の声に気づく力があったならば。気づける人がいくらでも周囲にいたなら自殺者数は激減するだろうが、そういう人が都合よくいたりはしないのが現実でもある。

平成13年の厚生労働省の統計によれば、
男性25〜34歳、女性25〜44歳で自殺は死因の第1位、
男性15〜54歳、女性10〜59歳で死因の3位圏内にある。

よく「死んでお詫びをする」という。死んだら自分の苦痛は軽減(消滅)するが、お詫びをしたことにはなるものか、そんなのは思い違いだと、ちくりと指摘していたり。
テーマは暗いが、ユーモラスでテンポもよいのでするりと読める。ほのぼの、衒いのないラストがよい。