いったんもんめかいったんもめんか


大学生が「それじゃ、いったんもめんだよ!」と何かの拍子に口にした。通りすがりに耳にしたアタシは、それを言うならいったんもんめだろと内心つっこんでみたものの、ふいに不確かな気持ちにおそわれた。
あれ?もしかして「いったんもめん」のが正しいのかな。「一反」の「木綿(もめん)」のほうは言葉として成り立つけど、「一反」の「匁(もんめ)」では平方単位と重量単位を重ねるだけで意味が通らない。鬼太郎があの妖怪を呼ぶときなんて叫んでたっけ。「もんめ」と叫んでいたような気はするけれど…いったんもんめー、いったんもめんー。頭の中で野沢雅子(声優)の声を再現しながら、帰宅した。
広辞苑によれば、「もんめ(匁・文目)」とは、(1)尺貫法の重量単位(=3.75 g)、(2)銭の単位(=小判1両の1/60)。「いったんもんめ(一反文目)」を解釈すれば、一文目で買える布の量とか。なんとなく筋は通らなくもないが、うーん強引か。妖怪の形状は白いひらひらの布状。単純に考えると、素材に由来する「もめん」のが正しそうな気はしてくる。いったいどっちが正解だ。
Webで検索してみると、同じ疑問を持っている人はたくさんいるようだ。「もんめ」か「もめん」か論争をしていた掲示板の痕跡も発見した。
ある院生の実施したアンケート調査によれば、

「もめん」は78%、「もんめ」は17%、その他は5%

「もめん」が圧倒的に優勢であったらしい。
日蓮宗新聞では、言霊と信仰に関する記事中に、

どの家にもある傘も、入魂すると愛嬌ある「唐傘お化け」になります。またこれもお話の世界ですが、ゲゲゲの鬼太郎の「ちゃんちゃんこ」と「下駄」は、妖怪対策に有効な「もの」ですし、登場する「ぬりかべ」や「いったんもんめ」も鬼太郎を助けて大活躍です。

記事を書いた人は「もんめ」派のようである。
御大水木しげるの妖怪大辞典http://www.japro.com/mizuki/set.htmlには、

一反木綿(いったんもめん)  
布が妖怪になった。付喪神(つくもがみ)の一種。「鬼太郎軍団」の空の守り。鹿児島県大隅地方出身。

「もめん」とはっきりと記載されていた。もはや「もめん」で決まりか。
それでも子供の頃に親しんだアニメの鬼太郎は、「いったんもんめ〜!」と叫んでいたような気がしてならず。*1前出の院生のアンケートには「その他」の回答として「もんめん」というのが2件。「もんめ」は「もめん」の訛ったものという解釈はできまいか。ここはひとつ、妖怪界に精通した目玉オヤジにお伺いしたいところである。

(追記)幼いまだ舌たらずなガキンチョにしてみれば「うっうんううん」のラテンのリズムよりも「うっうんうんうん」の和太鼓リズムのがはるかに言いやすかろう。無意識に脳内変換してそのまま覚えこんじゃった、というのがあんがい真相だったりして。

*1:ゲゲゲの鬼太郎は昭和43年、46年、60年、平成8年の計4回アニメ化。アタシが見たのは平日の夕方に何度も再放送されまくった昭和46年版で、声は野沢雅子さん。