韓流とアタシ(2)


日本にいながらにしてこれだけ韓ドラを楽しむなんてことはわずか2年前には考えられもしなかったのに短期間でこうも変わるとはね。もっとも2年前は韓国ドラマを観ようとする人数が格段に少なかったはずだから、驚くべき速度で需要が増殖したということだ。さてこうしてわりと手軽に見られるようになった韓ドラはどれもドロドロでベタ。昔の大映ドラマ似だと言われているとおり、ホントにそう。すべてのドラマが配信されているわけではないので、本国にはいろいろな傾向の作品もあるのだろうとは思うけども、とりあえずベタ系韓ドラに限っていうと共通点は、強引な展開と、それを支える三種の神器と魔法アイテムの存在を強烈に感じるってことかな。強引な展開の説明は割愛。
三種の神器は、

  1. 不治の病
  2. 記憶喪失
  3. 出生の秘密

これらはドラマの本筋を形作るために用いられ、ドラマチックな展開を約束し、視聴者の涙を絞りだしやすくする。例えば、

記憶喪失で行き倒れている女を拾った男、ふたりはすぐに恋に落ちる。だが男の部屋での幸せな生活は長くは続かなかった。
女が姿を消す。ようやくみつけだした女から「アナタはアタシのお兄さまなの」と告白され、「う、嘘だろ?」「本当よ、かくかくしかじかで」「それじゃ、俺たちの愛は」「だから姿を消したのに」などなど、するといきなり女が胸をおさえて「ううっ」。
病院で余命1年と診断され「死ぬ前にお兄さまに一目逢いたいと、でも交通事故で記憶を…」、ところが血液検査の結果で血縁関係も否定され*1、二人は残された時間を愛のみに生きようと決意する。
Happy End

なんてね。上記の例では神器の使用に必然性があってうまくはまりすぎちゃったので、例としてはちょっと失敗かしら。ま、ドラマでこんなふうにぜんぶ使うとやりすぎ感が強く、安くて薄っぺらな感じになってしまうので普通は2つぐらいまでしか使わない。といいつつ、なんと『冬ソナ』ではすべて網羅しているんだけどもね。は、さすがっちゅーかなんちゅーか。まあ、日本のドラマがたいてい全10〜12話であるのに対して、あちらは20話とかがざらだもん。『冬ソナ』も全20話。そうでもしないことには最初の“初恋記憶喪失+異母兄妹疑惑”設定だけでは間がもたなかったということなんでしょう。
次に魔法のアイテム。これは、ドラマの妖精から脚本家に「行き詰まったら使いなさい」と託されたハプニングアイテム(交通事故、海外留学など)と、そして「味付けにつかいなさい」と託された設定アイテム(イジメ、身分違い、御曹司、孤児院など)の二種類。
ハプニングアイテムの「交通事故」と「海外留学」は韓ドラの一つの特徴ともいえるほど、多用されている。ってか多用しすぎ。これは韓ドラを何本か観るとほんとーに実感する。
設定アイテムはなにやら野島シンジ臭がするわね。野島ワールドには三種の悪魔器「レイプ」「近親相姦」「身体的な障害」ってのもあるけれど、さすがにそっち系あまり見たことがな……あ、『イブのすべて』ではレイプ未遂が、『冬ソナ』では盲目に、はううっ。でもまあ野島みたいにエグくはない。概してムコウのは設定がドロドロとはいえ儒教的抑制の効いた表現がなされているので安心して見れるのだよ、わりかし。親子で視聴中に、間違ったふりをしてチャンネルを替えたり、やばいセリフを咳払いで消したり、そそくさとお茶を淹れに立ったりしないですむように(かどうかはしらんが)。

*1:韓国ではこの問題が解決されないまま、ふたりの世界で…なんてのはたぶんドラマの世界でも儒教モラルが許さない(と思う)