平谷美樹著『エリ・エリ』

エリ エリ レマ サバクタニ
(わが神 わが神 なんぞ我を見捨て給ひし)

2050年代、予言書に説かれた最後の法皇の在位、人々の宗教離れは加速した。信仰に代わる拠り所として科学を選択した人類は隣人(太陽系外知的生命体)を探索するためのホメロス計画にすがりつく。意気軒昂で計画に参画する学者たち、神の存在を科学的に証明すべく動き出した法王庁、計画中止をと暗躍する国家安全保障局など、様々な思惑が絡む中、意外なかたちでファーストコンタクトは訪れるが……第一回小松左京賞受賞作。*1

映画『パッション』が話題になってる最中にキリスト受難が布石となっているSFを読んだことにはなんの目論見もないが、よもや神の思し召しか?
テーマが壮大すぎると読者に出題したまんまで回答をうっちゃる尻きれトンボなSFも多いけど、これは「神は存在するのか?」に対して一つの答えを引き出してくれているのが嬉しい。ファーストコンタクトにしても、なるほどこういうのもありだよなあと納得。文章もうまい。
以下はちょっとネタバレ
作中のET探索会議でのある研究員の「蟻さんがおれたちの靴を叩いて『コンニチハ』って言っても(後略)」の台詞には「だよな」と苦笑いするっきゃないよね。

*1:ひらや・よしき ミキちゃんじゃなくて、男性なのね。1960年岩手県生まれ岩手県在住。SF作家と中学校美術教師を兼業中