唯川恵著『今夜 誰のとなりで眠る』

看取るのが私ならばいいのにと女たちに思わせてしまう風来坊の秋夫(38?)が交通事故で死んだ。
そこそこの外見で無駄な虚栄心がなく物事の本質を理解する飄々とした男ならば、私も惚れるだろうなあ。女たちがおりにふれて秋夫の言葉を思い出し、彼や自縛から解放されていくのが、すがすがしくも羨ましい。「君はいつも、ほしいものを口にする前に、それが手に入らなかった時のことを考えているんだね」「割れたものは仕方ない。これはもともと割れるようにできているんだから、割れても仕方ないんだ」