本日のよろこびごと。(749)


くノ一の 桜は一重で 八重凌ぐ(喜)
連ドラ初回がほぼ出揃ったところかな、たぶん完全に出揃ったよね? 今日は今期で一番面白くなりそうと思ったものを発表します。それは、じゃーん、
『妻は、くノ一』です!
えっ、なにそれ、今まで全然触れてないじゃんって? はい、自分も昨日までは完全にノーマークでした。BSプレミアムの時代劇枠にこんな良質で面白いもんが埋もれておったとは。いや、今までもBS時代劇にはちょこちょこ面白いもんはあったんだけどさ*1、『妻は、くノ一』はかなり出来がいいんだと思う。惜しむらくはタイトルが『奥様は魔女』を連想させるところ。ラノベか、ふざけてんのかって思う。そのせいで、ただでさえ減りつつある時代劇ファンが食い控えちゃうんじゃないかしら。でもタイトルはNHKの粗相ではなく、原作を踏襲しておるのです。
ってな前置きで、以下に推薦文をかねた説明と感想を、

  • 『妻は、くノ一』

原作者は風野真知雄氏、BSプレミアム金曜20時〜、2013年4月5日より放送開始、全8話中3話まで放送終了。
ペリー来航の約30年前、平戸藩(現在の長崎県平戸)の天文学にしか興味のない藩士・雙星彦馬(ふたぼしひこま)の元へ美人妻・織江が嫁す。仲睦まじい新婚生活はつかのま、1ヶ月で妻が失踪。ええっ、なんでだよー? 実は妻は幕府方の密偵。彦馬の特殊な才覚を怖れて調査潜入したものの、ただの無害なオタクにすぎないとがわかり、呆気なく調査終了撤収しただけだった。がーん。しかし彦馬はあきらめない。「自分にこの人しかいない! きっと妻もそう思ってるはず!」との一念で、家督を養子に譲って隠居し江戸へ。江戸では寺子屋で教えつつ妻を探し、その片手間で、天文学の知識によって市井の謎を解いたり、平戸藩への陰謀に巻き込まれたりなど、悠々と。一方失踪妻はというと、実は彼女も彦馬を慕い続けており彼が凶刃に襲われると影から窮地を救うなどの内助の功を…。でも任務では敵同士なの…涙。
とまあ、こんな感じ。
確かにやや荒唐無稽でラノベ感はあるが、ドラマは奇をてらうことなく心情の動きを丁寧に撮っているので、軽く見られても軽々しい感じがしない。アクションも安っぽくないし、時代劇の所作も美しい。別の言い方をすると、大人の鑑賞に堪える時代劇になっている。
そもそも配役が秀逸だ。
彦馬&織江夫婦に市川染吾郎&滝本美織、二人が夫婦として暮らしていた平戸での日々が度々回想として挿入されるのだが、その初々しさと可愛さったら、もうっ。そんな二人が江戸では離れ離れ、平戸藩密偵として潜入し正体が露見すれば直ちに討たれる妻、彼女を愚直なほどに思い続ける元夫。敵対する立場という二人の禁断のすれ違いぶりが切なくて、ううっ。
白眉は、平戸藩前藩主松浦静山役に配された田中泯。ね、田中泯って聞くだけで「あ、凄そう」って思うっしょ、で、実際その通りなんです。文武両道、深い洞察力持った静山の佇まいは、彼あってこそ。もはや他者は考えられない、その重鎮感と余裕。二人を温情をもってぬるく見守りつつも、「(もしも織江が姿を見せたら)俺が斬る」と彦馬に明主としての非情さを示す。こうした相反する陰陽が彼によって当たり前のように同居を許されているカッコよさ。惚れ惚れするわ。他にも、若村麻由美和田聰宏中村靖日堀部圭亮らの芝居も本気出しすぎだろ(笑)
権謀術数渦巻く江戸、1人1人の役柄にもいろいろ裏事情や心の綾があり、それらが丁寧にわかりやすくひも解かれていく。
つーか、もう、くどくど説明する前にホントに面白いんで騙されたと思って一度みてみてほしい。めんどくさかったら、Wikiで『妻は、くノ一』で照会してみるだけでも。原作の登場人物一覧を攫えば、きっと面白そうだなと思うはず。ただ、一つご注意を。雙星雁二郎(ふたぼしがんじろう)の項では
「ええーっ、アホやろー!?」
と退いちまうかもしれませぬ(笑)。ちなみにその雁二郎(梶原善)は、ドラマ予告によれば次の4話で初登場の模様。放送は4月26日ですっ♪

*1:当然全部見てるわけではなく、もっとすごいもんがあったかもしれません。あしからず