『奥様は首相』


BS-hiで日曜日の夜から『奥様は首相』なんていうおもしろい海外ドラマが始まった。我ながらよく発見したもんだ。
これはイギリスで製作された全6回のミニシリーズ、昨年、BS2で放送されたものの再放送にあたり、今回は日曜日から金曜日まで連続放送するという。
ドラマの舞台はイギリス。二大政党がののしりあいを続け、国民が投票したいと思える政党のない現状を憂いたスーパーの女店長ロス・プリチャードが、周りにあおられて新党(パープル党)を旗揚げし、与党の党首として当選して首相に祭りあげられてしまう、というストーリー。ロスは会計士の夫と、二人の娘を持つごくごく普通の、でもちょっと人より弁の立つ、魅力的な主婦である。
ネガティブキャンペーンで夫の古いセックススキャンダル(といっても女の子のお尻にタッチした程度)が暴露されたり、ロスが官邸の秘密通路(前ブレア首相に伝授された)を使ってセキュリティをまいて古巣のスーパーに遁走したり、当選までの経緯を描いた第一話はかなりどたばたしている。
ライトコメディなのかな?
と思えば、2話以降はイラクで孤立したフランス人を救出する軍事作戦の決断を迫られるという、シビアな展開もみせるようになる。アメリカ大統領から電話で「やめろ」と脅されるが「だめよ、フランスと約束したんだもの!」と断行、しかし犠牲者がでてしまう。落ち込み、己の決断のもたらすものの大きさに震えるロス新首相。さらに迎賓中のアフリカ某国大統領の妻子がロンドン見物中に暗殺されて、などなど。
そして家庭内にも暗雲が。
遠距離単身暮らしとなってイライラしている夫は職場の女性から誘惑され、長女はお小遣い稼ぎでヌードグラビアを撮られ、忙しさで家族フォローもかなわないロスにかまってちゃんな末娘。大役を担わされた母をサポートしようという自覚がほとんどないのか、おめーらは!? 夫には、過去に会計不正に加担したという妻の政治生命を止めかねない後ろ暗い秘密もあったりして(まだバレてないけれど)、頼りにならないどころか足をひっぱるばかり。
娘のヌード写真が議事堂の壁に投影されて大スキャンダルに発展し、お約束の暴露本が出版されて、とうとう一枚岩だったパープル党内にも不協和音が生じはじめ、と前途多難ななりゆきだ。
そこまでで3話分、展開はかなり速い。次から次へと事件が起こり続けるので、ひとつひとつの事件はあまりフォローも顛末も付与されないままにバックログ化する。そこがなんか物足りない。
ロスの右腕・財務大臣キャサリンが若い政治ライターと恋仲に(母息子ほどの年の差で、彼には婚約者がいるのに!)、などというサイドストーリーまで追加されて、いまさらサービスしすぎ。あと残り3話しかないのにどうなるの!? 
3話終盤、ロスは一般民衆代表の首相として大きな政治的決断を下そうとしていた。ロンドンから首都機能を移転する法案がそれである。法案はすでに上院で否決されたが、首相権限で強行しようとしている。「財源が無い!」という腹心の財務大臣の反対も押し切って。もしや、それすらもフォローされないまま終わったりして…。
それにしても今、よりにもよってこの時期にBS-hiなんて視聴者が限られたチャネルを用いて、政界再編ドラマというコンテンツをこっそりスタートさせるとは意味深だよな…。