『椿三十郎』黒澤版


年明けに織田版リメイクをみて「面白いじゃん」と感想を書き「黒澤版もみてみたい」としばらくツタヤを張ってみたものの常時レンタル中。ついにBSで録画したのを借りて見ることが叶いましたので感想を。
白黒画像はなにげに格調高さ五割増しで、三船はさすがに渋かっこよい。出演者は概ね発声がよろしく、ラストの室戸半兵衛との一騎打ちから「あばよ」の後姿のあたりは圧倒的に黒澤版のがしまりがあってグー。よいものを見せていただいたという感謝の心持ち。
しかし意外なことにアタシは織田版のがおもしろく感じた。おそらくキャストになじみがあってキャラがイメージしやすかったためかと。
茶室の三悪人(風間、稔侍、西岡)、ウマヅラ城代家老一家(藤田まこと、玉緒、鈴木杏)、押入れ侍(佐々木蔵乃介)のあたりの配役は相当絶妙でした。織田はいかにも軽佻浮薄な感じだがそれがまたそれなりに三船とは違う魅力的な椿を出現させていて、これを正当に評価してもらえないのは同情するね、いくら嫌いな奴だとて*1
室戸半兵衛のトヨエツvs仲代はなかなかよい勝負、どっちもよいです。でもま、仲代は正直言うと用心棒の与太者役のが色気があってイキイキしてたかな。織田とトヨエツの怪しいショットは大好物。あと、織田版若侍代表の松山ケンイチのドヘタさは新旧すべておしなべても特筆すべき。
さて織田版のがおもしろかったと書いたけれど、ここで織田版の最大のマイナスポイントを挙げてしまおう。結構、致命的です。
城代家老夫人に「あなたは抜き身の刀ですね」とやんわり非難されるわりかし重要なセリフ。織田がソフトな風来坊椿三十郎であるがゆえ、あまり抜き身の刀っぽくないのだ。もっと安全な、なんつーか「お坊ちゃん侍世直し道中記」って感じ。三船は確かに抜き身でありました。脚本に手を加えないということなので仕方ないけど、惜しいねぇ。
よって三船の"凄み"勝ち。

*1:織田裕二、テレビのチャンネルを替えるほど嫌いでした、一時期(笑)