もちは餅屋、うなぎは魚屋


「うなぎが売れなくてたいへんなんだよねぇ。もう、本当に売れなくなっちゃって…」
大丸ピーコックでピーコックおじさんがボヤキながら半額シールを貼っておりました。客が近寄ると、
「あ、それ浜名湖のね、養殖だけど本当にいいものを仕入れたんですよ。でも、うなぎ離れだよね。はは、さみしいねえ」
そういえば先日も別のスーパーの売り場で初老男性が店員さんを捕まえて「これは本当に国産?」と疑ってかかっているシーンも目撃、ピーコックのは自然な色合いをして妙にふとってもいない点は合格で、それに見るからに美味そうなのでアタシはためらわず籠に投入しましたが、半額にしても飛ぶように売れるというようでもない。本当にうなぎ離れは深刻みたいですね。
さてうなぎはどうやっていただきますか? 白焼き、ひつまぶし? アタシはやっぱりうな丼です。軽く酒をふってレンジで温めたあと1分ほどオーブンで表面をあぶって、あつあつのご飯に乗せて、タレと山椒で「いただきます」。
ピーコックのうなぎもそのように食して、
「う、うま〜」
身がほっくりとやわらかく、皮は口にあたらず、しつこい脂っこさもない。半額で買ったことが申し訳なくなるほどに本当にいいもので、最近食べた中でピカ1でした。ピーコックおじさんありがとー。でも子供の頃に食べてたうなぎには正直かなわない。
子供の頃に食べてたのは、しごく普通の商店街の魚屋で売ってた蒲焼です。夏場になると店先に大きな青いポリバケツが置かれ、中にはうなぎがウヨウヨ、丑の日には水の量よりうなぎのが多いんでは?という混雑振りでうなぎがうなぎの海を泳いでるようで、グロおもしろかった。バケツには青いホースで常に新しい水が供給されていて、夕方になると魚屋の親父が「んー、今日はこんぐらい売れるかな」とバケツから適宜すくって裏で捌いて串にさす。魚屋のオバサンがそれを店の表でガスで焼く。じゅうじゅう。ケムリとコウバシイにおいで客は財布を開いて「中、3本頂戴」「あいよ」みたいな。そーいう魚屋さん。近所に一軒ぐらいはありませんでした? 今は近所に商店街ってもんがないとこに越しちゃったんでスーパーで買うか、さもなくばデパートか。どこかで捌いて焼いて運んできたのでは、あの魚屋さんの鮮度には叶いません。
商店街かもーん。