SPドラマ『氷点』

拾い物でした〜。
三浦綾子さんね。20代でどっぷりはまり、キリスト教に改宗しようかと思うほど思い入れがあったので(いまだに無宗教ですが)、キャストを聞いて、しかもテレビ朝日だし(『氷点2001』なんていう情緒のないドラマ化がまだ記憶に新しい)、どうなることやらと不安を感じておそるおそる見たらば、ほう、これはこれは、いいほうに裏切ってくれましたねぇ。
あのね、母親夏枝役の飯島直子がよいのー。予想外によいっ。着物が似合う。優しいお母さんの微笑はマリア様のよう。豹変したときの冷たい目つきなんかさいこうにぶるっちまう。飯島直子、いつの間にこんなに女優として成長したの? 予想外だなんて言った自分が恥ずかしいです。陽子を実娘を殺した犯人の娘だと誤解していたときの、一見和やかな家族の会話。その底流に流れる氷点下の氷の刃が、すげー。ぐさぐさぐさー。母親のやたら丁寧で穏やかな言葉遣いが冷え込みを加速させます。「…ございませんわ」「…ですのよ」などの前時代的バカ丁寧さが素敵すぎ。時代を現代に移さなかったとこ、お手柄でした。
いちいち丁寧につくってあったのもいいね。そりゃ話の展開は急ピッチでちょっと目を離すとついていけないとことかありました。それでも描くべきはじっくりとねちっこく、そして適度に重厚で(洋館のロケとかいいねー)、さらにたっぷりと映し出された旭川の四季の美しさがまた彩を添えて、和むー。美しい景色は暗いドラマの救いでした。
女優陣がみんな美人だったのも眼福っ。そのぶん男優さんが…年取った子はよいとして、若い子達がちょっとなぁ。も少し美形を、なんて思ってしまう。ほら、バランスってもんがありますでしょう(←あ、語尾に夏枝が!)。兄(手越祐也)はいまいち垢抜けない優男なとこはよいが、も少し「かっこいいわね」といわれて納得できる子をとか、兄の親友(窪塚俊介)はちと台詞回しに違和感があるなとか(かなり優しい言い回しをしてみました)、実弟中尾明慶)は今風すぎる。
ストーリーは忘れてたし、面白い。でも違和感あるね、陽子のキャラには。ドラマ前半(原作『氷点』)の陽子にはまだよいとして、後半(原作『続・氷点』)の陽子は悲劇の主人公ぶってて好かん。兄に心を残しながらも北原(兄の親友)を選ぶあたりが偽善くさくて、キャンディ・キャンディでテリィがスザナを選んだときにそっくりで、あれを読んだときのアタシの呆然とした気持ちを思い出しちゃいましたわ(古キズ)。それに、「赦すことを忘れていたわ」と流氷をみて改心してたくせに、実母にその気持ちを伝えに言ってなかったのか!? 言わなきゃ意味ねーだろと脱力。あまりにも陽子が頑なすぎて、北原と結婚した後にも贖罪やら罪悪感だのの種子をみつけては周囲に不幸オーラをふりまいていないか、かなり心配になりましたよ。とほほ。
ま、全体的にはすごくよかったです。テレビ朝日、えらし。