駅弁の釜でメシを炊く


数ヶ月前にスーパーの駅弁フェアで買って中身を喰らい、「いつか使うだろう(たぶん使わないだろうけど)」と食器棚奥へ仕舞っておいた、横川の駅弁釜飯の釜。ついに出番がやってきた。
さかのぼること半月前、普段使い続けていたメシ炊き用土鍋でご飯を炊いたところ、おや、ふっくらしていない…。炊き込みの途中で火が消えてしまったのかと、追い炊きをするがうまくいかない。そのときは腹具合に余裕があったのでもう一度メシを磨ぐとこからやりなおし、今度はつきっきりで炊いてみることにした。手順をはぶかず、炊く前に20分間水に漬けおきし、炊き終えてからも10分蒸らす。そうしてできあがりの蓋を開けると普段ならばホックホクでツヤツヤのご飯からふんわりと白い湯気が立って実に食欲をそそるのであるが、はたして…嗚呼、またしても! 「湯気がでてない…冷たいわけではなく炊けてはいるけども、飯粒にツヤがない」。ど−して? 仔細に土鍋を点検してみると、内側から外側にかけて大きくヒビが貫通しているのを発見。火にかけている最中にそこから水が漏れているとかいう様子はまったくなかったけれど、おそらくこのヒビのために均一な熱伝導が妨げられて、メシが美味く炊けなくなったのではないかと思われる。
以来、土鍋ご飯はあきらめて、厚底の小鍋で炊くようにしてみたが、やはり土鍋のときほど美味くない。ふっくらさせることについては、鍋の蓋の上に土鍋の蓋を置き圧力を増加させたことでやや改善できたが、それでもかつてにくらべるとぜんぜん美味くないままなのであった。
そのように半月ほどマズメシを我慢していてふと今朝になってこの駅弁の釜のことを思い出した。そーいやこんないいもんがあったんじゃん。ちいせーが1杯分炊くにはちょうどよさそうである。「取っておくだけじゃ意味ねーしな」と、ダメ元で使ってみたところ、
「おぅ、こ、これはっ!」
蓋を開けるとそこには懐かしのふっくらツヤツヤメシとの劇的な再会が! さらにそうなのだ、この湯気なのだ。うーん、実にそそるではないか。茶碗にとると、ほどよい粘り気もある。喰らえば「ほぉぉ!」飯粒の甘みが生きている。ウマ〜〜〜。こんなことを言うのは悔しいが、土鍋で炊いていたときよりもウマいかも。くやちい。釜飯炊いてウン十年(?)長年の研究成果のたまものか、熱伝導が飯炊きにどんぴしゃりな按配になるように作られているんだろうね。脱帽です。

  • 横川の駅弁の釜でのメシ炊き方法。

無洗米100cc、水150cc(大き目の茶碗に一杯分)。強火で沸騰したら、蓋をして弱火で7分、火を止める瞬間に10秒だけ強火に、あとは火からおろして10分蒸らす。
たったこれだけのプロセスでめちゃウマのメシにありつけます。同じお米で炊いたとは思えないウマさ。いままで何を食っていたのか?って思うほどかも。死蔵してる釜があったらぜひ一度チャレンジしてみてはいかがかと。ただし炊ける量は1人分が限度。