青山散策

根津美術館のかきつばた


連休初日。

5月8日から2年半改装工事のため閉館するというので駆け込み来館。特別展は屏風絵。点数は期待していたよりも少なくて物足りませんでしたが、やはり応挙と光琳は良い。構図がすばらしー。無駄がないのがすばらしー。屏風絵なので少し距離をとって着物で正座して抹茶でもすすりながら心静かに鑑賞したいものですが、離れると人垣でみえなくなってしまうのがゴールデンウィーク&美術館の悲しさ。連れがしきりに「欲しい。もって帰りたい〜」と所有欲をあらわにしていました。アタシは自分で所有するなんて恐れ多くて、たまにゆっくりと鑑賞できればそれでよいです。1日独り占め権とかあったら最高の贅沢だよね。
さて、絵以上に感動させてくれたのが庭園。都会のど真ん中と思えない静謐さや繊細な造園の妙に関しては今回が初訪問というわけではないのでさして驚きゃしません。「やっぱいいねー」と感嘆するのみ。実は、館内展示の目玉作品である応挙の『藤花図』と光琳の『燕子(かきつばた)花図』という二つの屏風絵との時空を超えたコラボレーションがそこに展開されていたんです。藤棚からひかえめに咲きこぼれる淡紫の藤、満開に咲き立ち並ぶ青紫のかきつばたは、屏風絵の世界さながら。等しく庭園に現物展示されてるだなんて、なんて心憎い演出なんでしょう。知らずにいったので感動ひとしおでした。あ、ネタばれしてすみません。

  • 青山散策と羊の呪い

根津美術館周辺をひたすらウロウロ。路地を地図も知識もなく思いつくままに曲がり、青山墓地に迷い込んだり、「あれ、ここ前も通った?」「通った…」などという無駄な動きを繰り返しつつ、変わった造作の建築物に「かわいい」「素敵」「ヘンすぎる」「悪趣味〜」「おお、こんなとこにこんなものが!」「家賃高そう」「住みたい〜」などの感想をつれづれにこぼす。ものすごくたくさん歩いたわりには大して移動していなかったりして、「羊の呪いだ!」などとわめく。実は根津の庭で羊の石像を見つけたのをかわきりに、なぜか行く先々で羊の図柄の何かを発見しまくり、「なんでこんなにあちこちに羊が?」という偶然の連続への惧れが、やたらと迷いまくることへのいらだちとつながって、すべて羊のせいに違いないへと帰したのでした。 

  • ランチ

根津美術館そばの路地にある、変形ひし形の極小地に立った木造3階建ての、ちょっとかわいらしい一軒屋のレストラン『タヒチ*1にてタイランチセット1400円+コーヒー210円。味はまあまあ。入り口がちょっと怪しい感じで「大丈夫なのかしら」と思うけど、中に入るとたいそう素敵です。お店の人も人相悪くても感じよいです。客席は2階。さらに螺旋階段を上ってこっそり覗いた3階は、ウッドデッキテラスつき特別個室みたいでした。ここのテラスはたいそう気持ちいいので、こっそりこっそり。

「せっかくだから」と我侭を言って連れて行ってもらったのはアタシ、そして人の多さに「もういいです」とすぐに弱音を吐いたのもアタシでした。ヒルズは同潤会アパートの面影をのこした同潤館と、ザッツヒルズ的現代建築の部分から構成されています。同潤館のほうはかなり心惹かれます。ここまで面影をくっきり残してくれた嬉しさと、ここまで残すんなら全部ちゃんと残せというやりきれなさが半々。同潤館サイドの最上階から現代建築部分の最上階へ移動すると、いきなりメッカ、「これが名物のスロープ構造だよ」と下層階までスロープの連なりとそこをぞろぞろ蠢く人並みを一望できます。これがかなりぞわぞわとする眺め。映画メトロポリスを連想して嫌気を誘い、「もういいです」となったわけ。こんなのどこがおもしろいの?と思いました。

  • ふたたび青山散策

Maduへ行きたいというアタシの要望で右往左往。何度もいったはずでも、方向音痴に路地を覚えろなんて無理な話。いつしか「もう無くなったんじゃない? ここも入れ替わり激しいし」「えー、そうかなあ」なんて撤退疑惑まで浮上する始末。最終的に花屋さんに尋ねて、「この道をずーっとまっすぐです。道路も渡って、ずっとまっすぐ行ったとこです」。かなりずれていたみたい。Maduを出た後は、またウロウロ。そしていきなり「なにあれ!」「サグダラファミリアみたい」な建造物を発見。明るいうちははぜんぜん目に入らなかったけど、ライトアップされてひときわ悪目立ちしているアレはなんだろう? なんかとってつけたようなアイアンの背の高い塀と門構え。サイドの扉前に立つ関係者らしき女性にきくと「結婚式場です」「へえ〜。こんなのあったのはじめて知りました」「今日がオープンなんですよ」「えーっ!」。なんか軽井沢あたりにありそうな雰囲気。
一日中好天に恵まれて、歩き回って適度に運動にもなったし、小さな発見もちょこちょこあってなかなかよかったんじゃないでしょうか。

*1:南青山4-27-17