『女系家族』最終回


緊迫したぁぁぁぁ!(大満足っ) 
ほとんど矢島家の客間を舞台にした密室劇も、だれることなし。背景に映ずる襖絵や庭の素晴らしさにたまに目を奪われてしまったのを除けばほぼ釘付けに。
本宅へ乗り込んだ愛人文乃(米倉)。専務宇一(橋爪)は促され文乃の持参した新しい遺言書を朗読しはじめる。動揺する矢島三姉妹&コバンザメ。飄々と先を続ける宇一。ところが財産目録のくだりでふいに口を濁す。震だす指、たらり冷や汗、焦り乱暴に先を繰り、極まって遺書を破ろうとするまでの一連の変貌は実にお見事。目録を少なめに作り差額をかすめとる目論見がばれてうろたえだすと、待ってましたとばかりにきゃんきゃん吼える矢島三姉妹。信頼していた(というより舐めきっていた)使用人に騙されたのがよほど腹にすええかねたのね。ああ、見苦しい。そんなに追い詰めると逆恨みされて大変なことになりまっせ、ただでさえそれまでの素行でじゅうぶんに恨みを買っていたのだから、と心配してやる義理もないのですが、あんのじょう宇一は逆切れ。一家の秘密を次々と暴露しまくる。さすが番頭はん(って専務ですが)、なんでも知っているのねぇ。いったんは切れた宇一が、遺言書の日付を確認し観念するまでの心の流れも実に自然で、脚本も巧みでしたね。
さて矢島三姉妹、憎っくき愛人の持参した遺言書を受諾するまでどれだけひと悶着することか、多少なりとも父の想いを汲むことができるのか。すべてにきちんと決着がだされていました。くどくどしくは語りませんが、ことに「あたくしは女系家族の総領娘なのよ!」と高飛車に主張しつづけてきた長女が、ひとしきり狂乱したのちにはらりと涙をこぼし、「肩の荷が下りた気がする…」。なるほど、父親の愛は娘たちに正しい道を遺していったのね。己の欲の醜さを知り開放された姉妹は、なにげに幸せそう。今井美紀のかろやかなエンディングが最終回ではじめてしっくりと響きました。
大団円、そして乳母車を押す文乃。
愛する人の遺言を果たしおえ、10億からの財産と息子の手堅い将来(成人後は矢島商事の共同経営者)と一通りを手に入れた文乃。「いいえ、あたくしは私欲などというものは…。すべてあのお方のご遺志のままにしただけでございます」などと今時にない言葉遣いで殊勝な顔を続けていて、もしかして本心からそーいう天使みたいな女なのかと、ああ、だまされた。最後の最後の一瞬、かすかに歪んだ微笑はまるで般若のようじゃんか。うわ、こわっ。一瞬だけというところが、また心憎い演出です。ここで終わればパーフェクト。さらに続けて、嘉夫(レオ)の遺影が映り、「んふふふふふふ、んふふふふふふ」という墓場からのレオのほくそ笑み、なんちゅーホラー演出は蛇足。