笙野頼子著『説教師カニバットと百人の危ない美女』

ベストセラーにのることはないがカルト的人気で文壇にそこそこの居場所を確保していたブス物私小説家八百木千本(女・40歳)。彼女は結婚亡者でありながら結婚できずに迷い、説教師カニバットに心酔する、ドブスゾンビ100体に憑かれてしまう。FAXを介した暴力的でサディスティックなブス論戦を圧倒的な筆致で綴り果てられて、アタシも果てた。うーん、これは、いったい・・・なにっ!?
八百木の言語を尽くしがたいブスぶりは、しかしながら笙野の天才的で激烈で過剰な言を尽くして語りたくられ、ほとばしったブス汁がそこらじゅう轟々と渦をまいている、という感じ。あまりのエネルギーに、いったいこれは本当になんなのー!と思いながらも、読み進む。最後まで読んでもよーわからんかったが、笙野頼子が只者ではないということだけはよくわかった。癖になるかも。
八百木の略歴に、「文筆家としてデビュー後名のある賞を次々ととりこれで文壇で安泰かと思われたが、その後泣かず飛ばず。しかしブス物私小説家としてカルト的な人気はあるので、小説誌の末席に色物としての需要でそこそこ食うには困らないという安定感を確保」と言うような但し書きがあり、笙野自身の著者略歴にも「芥川賞、野間文学賞」などの受賞歴、そしてご本人は女小朝だと己を描写…うーむ、どこからどこまでが八百木でどこからが笙野頼子なのか、その境界のあいまいさがオカシイ。といってもちゃんと作中の作注では、八百木注と笙野注の書き分けがされているのだが。
あ、これ純文学だったんだ・・・へー。