拉致家族の帰国で思うこと


友人のMarvyさんから

拉致被害者が何をいっても「自己責任」って世論は起きないと思うのでなんだか安心してみてられる。
とりあえず5人が家族と一緒に暮らせるようになってよかった。

というメールをいただいた。今日はその返事を、

アタシも「もしかしてこの特別機の旅客運賃を請求されたりするのかしらん?」という疑惑は頭をかすったけれども、ありえないモンね。普通に日本で海岸デートをするときにまで国際犯罪に巻き込まれるかどうかの責任なんてもてないし、ってか、そんなことがあった現実にあっただなんていまだに驚愕。でも戦時中に日本がやった強制連行と比べると、本人たちへの迷惑度(なんて言葉は温すぎますね)はかわんないのか、いやそんなこともないのかな。
5人を含む帰国した人たちをなるべくそっとしといてあげたい気持ちはあるよ。家のすぐ前に取材陣が陣取って、外出のたびにフラッシュの放列が、なんてしんどそう。アタシには耐えられん。プライバシーの侵害だよな。とはいえアタシも戻ってきた子供達がなににどういうふうに反応して、どんな表情をするのか、なにを言うのか、興味がある。うどんを美味いと言ったとか、日本食は甘すぎるから口にあわなかったりしたとか、そういう情報にも、ホウホウと興味がつきないもの。今は日本中がそんな感じだと思うから、とりあえずこの好奇心がひととおり沈静化するまでは彼らは耐えるしかない。残酷だけども仕方ない。
せめて、「救う会」内部での確執なんてことまでわずらわさないであげてと思う。いろんな立場に配慮するがゆえに、さらに周囲から与えられるプレッシャー。子供が帰って来ても『手放しで喜んではいけない空気』。つらい。そうした配慮を怠ると、またぞろイラク人質解放のときのようなバッシングがはじまりかねない。これまた仕方ないとしかいえないね。
さっき「戻ってきた子供達」って書いたけど、当人にとっては実はOneWayなんだよね。
もしも今、アタシんとこにいきなり小泉首相から直接電話があって「実はあなたの祖国は北朝鮮だ。だから、北朝鮮に帰れ」と言われても、「はっ? なにそれ?」だもん。ぐだぐだしてると、「実はご両親も密かに北朝鮮渡航ずみだ。これは国際問題だから」って、ふいうちされるわけさ。「帰れ、帰れ」と説得されても、ちょ、ちょっと待ってよ〜、いきなり国家間の問題にされても困るわ、アタシの意志はどうなのよと。アタシに選択の余地はないわけね。でもよりにもよって仮想敵国だし、生活が困窮している独裁国家北朝鮮だなんて…と大混乱さ。
なんて考えると、これは本人の意志を無視するという意味では、たとえ好意からにせよ、いきなり他所の国へという意味では穏当に拉致されるのとあまりかわらないかもしれないと思ったりもし(いや、違うということは重々承知しています)。日本に住んでいるアタシたちにしてみれば北で暮らすより日本で暮したほうが楽だし楽しかろうとは思うけど本人にとってどうなのか。どこも住めば都だという。そのへんの気持ちを今一番理解できそうな、中国残留孤児の帰国者たちに話を意見をきいてみたい気がする。
曽我さんの家族については曽我さんにとって残念なことになってしまって、彼女のうちひしがれた様子をみているととても気の毒だなあと思う。ただ、彼女の家族については他の一家とはいささか事情が異なる。夫のジェンキンズ氏は自らが進んで北に投降した人なので、彼の意志を無視して日本につれてくるわけにはいかないよ。家族を一緒に暮させてあげたい、彼らを日本にと思うのは、ムコウにしてみれば「なにを一方的なことを勝手に思いつめているんだ?」という感じになりはしまいか。妻の意向=夫の意向あらず。帰国するか否かについてはもはや家族の問題であって、国家の威信を背負ったカタチで首相がくちばしをつっこみすぎないほうがいいんじゃないかな。警察だって民事不介入だもん。第三国で家族で話し合いがもたれることになったというのにはとりあえず賛成。
まあいろいろと考えちゃうね、今回のことは。
子供達はムリに日本の学校に通わなくても幸い日本には韓国系の学校もたくさんある。どこに行っても異邦人感覚があるのは否めないだろうけど、とりあえず日本語を覚えてねと思う。「子供」といっても実際にはほぼ「大人」でもあるのだし。