『足立美術館の魅力展』

hal8182004-05-13

横浜高島屋ギャラリーにて<4/29-5/17>
足立美術館*1は東京都足立区にある美術館ではありません。「1970年に島根県安来市に開館された美術館で、地元の実業家・足立全康氏の収集品を所蔵。横山大観をはじめとした近代日本画や陶器などの魅力的なコレクションと、出雲の豊かな自然を借景とした1万3千坪の広大な日本庭園で知られています」(チケット裏より抜粋)
今回の展示は...
日本画では横山大観上村松園、土田麦僊、鏑木清方安田靫彦前田青邨など、陶器は北大路魯山人河井寛次郎。個人的に好きな竹内栖鳳が物足りなく感じた以外は、厳選された100余点は質量ともに充実のボリューム感です。
展示構成は、近代日本画→陶器(河井→魯山人)→現代日本画の流れ。旧日本画の点数が4〜50点あったのに比べ、トリをとる現代編は3作のみ。しかし平山郁夫/西田俊英/宮北千織によるのはいずれも無国籍風の大作で、今後の日本画のひとつの流れとして、シルクロードを逆行しやがて西洋画と新たな邂逅をしていくということがあるのかもしれないと思わせる作風でした。
特に気に入った作品を以下にメモ。

 三頭の馬とそれを曳く二人の人物(男と少年)を描いた屏風絵。思索めいた男の表情と、対照的におぼつかない少年の表情、そして馬の脈動感。裏箔*2による柔らかな光が作品のトーンを整えていて、安らぐ。銀閣寺の側に彼のアトリエを開放した橋本関雪記念館「白沙村荘」というのがあり、庭も卓越し京都の名勝に指定されているとか。いつか機会があれば。

  • 榊原紫峰 雪空

 冬羽を膨らませてじっと雪を待つ枝上の雀たち。ふるふるしてそう。あまりにも可愛いので、ぎゅっとしてあげたい(いや、死なない程度に)。

 こちらは春待ち、しかも黒斑猫。梅の木の側で、初春の寒さに前足を縮ませて目を細めている。やせ我慢しているふうが愛しい、やはりぎゅっと…(以下同文)。

  • 宮北千織 うたたね(右上画像)

 異国の薄絹を重ねて纏った少女が長椅子で青いクッションに凭れまどろんでいる。ふわりとして暖か。独特の雰囲気と無国籍なタッチが相乗していてとても魅力的。絵葉書を衝動買い。実物はかなり大きい。第8回足立美術鑑賞受賞。本作について作者は、
「西陽の時間、アトリエの壁に陽がさし込む。仕事にならないので、カーテンを閉めようとして、ある日、その美しさに手を止めた。西陽の形と人物を組み合わせて絵にしたいと思ったら、人物のポーズは自然とすぐに決まった。椅子の面積と陽のあたった白い面積に気を使った。題名はいつも最後まで迷うが、この絵の場合最初から「うたたね」にしようと思った」と。<総括>
Rさんのご好意により招待券で入場させてもらったけれど、たとえ入場料800円を払ったとしても惜しくないほどの充実した内容でした。
最後に...

「ワシの人生は絵と女と庭や」by 足立全康氏

*1:足立美術館のHP http://www.adachi-museum.or.jp/

*2:紙の裏に金箔を張る日本画の技法