吉野屋豚丼ごぼうパワー

金曜日の夕食に吉野家豚丼を食ったらこれがなかなかヒットであった。味付けは牛丼の基本と同じ砂糖醤油なのだが、具に従来の玉葱にごぼうを加え、このごぼうなかりせば牛丼の牛を豚に替えただけじゃん、それならだんぜん牛のが美味いじゃん、となってしまうところをうまく矛先をかわしていた。ごぼうはそれ自体も秀逸。出汁の味がしみこんで、ほどよいやわらかさとしゃりっとした歯ごたえ、うん、なんともいえずにイイ。銃火に倒れた牛丼君を背負って窮地を脱した英雄と受勲されてもよろしかろう働きっぷり。おみごと。

電車の中で、美味かったなー豚丼、あれはやっぱごほうがいいね、ごぼうだ、ごぼうが、ごぼうなれば、などと牛蒡のことを反芻しているうちにふと記憶の底から蘇った第二次世界大戦ごぼう逸話。ご存知だろうか。日本軍の捕虜収容所に、兵糧すら不足しているなかでも、故郷を遠く離れた虜囚となって心細かろう捕虜にせめて少しでも滋養のあるものを食わしてやろうとわざわざごぼうを料理に出すように手配した、人道的な所長がおったそうな。ところが戦後彼は、木の根っこを食わせた非人道的な行為を糾弾され戦犯として処刑されてしまったのであった。ああ、文化の違いがまねいた哀しい誤解。子供の頃に母が好んでなんども聞かせてくれた話のひとつなのだが…。

ごぼう、あなどるべからず。

ところでごぼうを漢字で書くと牛蒡、牛草のかたわら(旁)と書く。それが牛丼屋を救うとは(いや、別に救っちゃいないって)、これぞ因果。やはり、ごぼう、あなどるべからず。である。